◆聖火がやって来る
聖火が 門司を通るんや
僕の兄ちゃんは
聖火ランナーの ばんそうをやるていうて
毎日 夕方 練習に行っとる
かあちゃんは
「聖火なんて一生に一度くらいしか見られん」
て言いよった
聖火を見るって すごいことなんや
うちの家の人(兄ちゃん以外)は
聖火が通る時に 見に行こうかと思うたけど
「見物人が多いけ ようと見えんやろう」
てゆうて
前の日に リハーサルを見に行った
◆聖火の当日
僕は家から 電車通りのほうを見よった
(うちの家は 町が見わたせるんや)
そしたら 汽車の煙みたいに
細い煙が立ちのぼりながら
電車通りを行くのが見えた
「あれが聖火なんやな」
煙は めかりの山を登って行った
山の真中へんまで行ったら
もう わからんようになった
◆「オレンジ色の光}
あとで テレビで
「オレンジ色の光」て 何回も言いよった
「オレンジ色の光」って どんなんやろ?
聖火の色って 特別な色なんかなあ
見物に行った方が よかったかなあ
けど いつか 外で
大きな凸レンズで 日光を集めて
紙に当てたら 紙がもえだした
それは 色も もえ方も 普通の火やった
ようと考えたら あれも聖火やないのか?
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※煙は めかりの山を...:古城山の中腹に 聖火台があって その夜 聖火はそこで一泊した 翌日 聖火は船で関門海峡を渡ったと思う
※「オレンジ色の光」:カラーテレビが あまり 普及していなかったためか アナウンサーが 一つ覚えのように何度も そう形容していた 僕も家族も 聖火は特別な火だから 自然 色も特別になるんだろうな と思っていた (あこがれ・夢の多き良き時代!)