「あんたら 兄ぃが呼んどるから ちょっと来て」
友達と二人で老松公園を歩いていたら
後ろから声をかけられた
背は低いけど中学生みたいだ
何となく いやな感じがしたので 無視していたら
「兄ぃが用があるから来いって! ついて来い!」
(やっぱり あれか)
前に痛い失敗をしていたので
どうしたらいいか わかっていた
途中 誰も見ていないのを さっと確認して
ポケットの中の財布を 茂みの中に放り込んだ
友達に説明する余裕はなかった
「兄ぃ」は公園の片隅の木陰にいた
ちょっと大がらなやつだ
「お前ら 金 持っとったら出せ」
「・・・・・・」
「ポケット検査するぞ
持っとったら ひどい目に合わすからな
今のうちに出せ」
「持ってない」
僕は わりあい 平気に答えられた
「お前は?」
友達も 持ってない と首を振った
「よし 行け 誰にも言うなよ」
検査は なかった
財布は 元のところにちゃんとあった
あの使い走り君は どうなったんだろうな
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